株式会社の資本金について考える場合、1億円が1つのポイントとなります。

資本金が1億円以下の法人であれば、法人税法上で中小企業向けの特例措置という、法人税に関する優遇措置を受けることができます。

しかし、資本金の金額が1億円を超えると、この特例が受けられなくなります。

中小企業向けの特例措置について

法人税法上の中小企業向けの特例措置の主な制度として、以下のようなものがあります。

  1. 800万円までは交際費を損金にできる
  2. 留保金課税がかからない
  3. 貸倒引当金の損金算入の際に有利なオプションがある
  4. 所得800万円までは法人税が軽減される

1. 800万円までは交際費を損金にできる

法人税では、一般的には、交際費は損金としては計上できません。

しかし、資本金が1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までは損金に算入できます。

なお、中小企業でも、交際費の支出額のうち800万円超の部分については、原則のとおり、損金扱いはされません。

2.留保金課税がかからない

留保金課税とは、法人所得のうち、法人税を差し引いた残りの金額の一部を、会社の内部留保(個人で言えば貯金)として積立てた場合、その積立金に対して課税するという制度です。

資本金1億円超の法人が内部留保を行った場合、それに対して法人税が課税されます。

しかし、資本金1億円以下の中小企業の場合、税引き後の利益を会社の内部に積み立てても、法人税は課されません。

ですから、安心して、会社の利益を会社の内部に積み立てることができます。

3.貸倒引当金の損金算入の際に有利なオプションがある

一般的には、損金算入できる貸倒引当金の金額を算定する際、売掛金や受取手形などの債権の総額に対する、実際に回収不能になった債権額の割合(貸倒実績率)を基礎に算定しなくてはなりません。

しかし、資本金1億円以下の法人の場合には、債権総額に法律で決められた繰入率を乗じて算定した貸倒引当金の金額と、原則どおり、貸倒実績率を基礎にして算定した貸倒引当金の金額を比較して、どちらか高い方を貸倒引当金として損金算入できるという、特例の適用を受けることができます。

4.所得800万円までは法人税が軽減される!

現在、法人税の税率は19%ですが、資本金1億円以下の中小企業の場合、所得800万円以下の部分については、税率15%の軽減税率が適用されます。

なお、中小企業でも、800万円を超える所得については、一般の場合と同じく19%の税率が適用されます。

これらの特例が適用されない場合について

資本金の金額が1億円以下でも、資本金又は出資金が5億円以上の大会社の完全子会社となる法人には、上の特例すべて適用されません。

その理由は、大企業のグループ会社である中小企業は、資金調達能力等を十分に有すると考えられるため、法人税法上の特典を与える必要がないためです。

まとめ

上のように資本金が1億円以下か1億円超で税制的な扱いが大きく変わっていきます。

実際、資本金を1億円以下に減資するだけで、何百万円もの節税に成功した企業もあります。

ただ、資本金を減資すると信用度が下がる等のデメリットも存在しますので、慎重に判断するようにしましょう。